
以前から「スローワーク」とい言葉に興味を持っていたのですが、この本の著者も「働き方研究家」という面白い肩書きの方で、自分らしい魅力的な仕事のあり方を実践されている人々を訪ねてインタビューした内容が中心となっていて、この本もまさしくスローワークの本と言えると思います。書店では「13歳のハローワーク」と並んで平積みにされていました。「自分の仕事をつくる」といっても、いますぐ独立してフリーで働くためノウハウ本といった類の内容ではなくて、マインド的な部分を掘り下げていく内容なので、自分の立場に照らし合わせて色々と考えさせられます。
柳宗理、象設計集団、IDEO、ヨーガン・レールなど有名デザイナーやクリエイターが数多く登場するので、デザイン系に興味のある人はそれだけで一読の価値があると思います。その他にも天然酵母パンで有名なルヴァンや、アウトドアメーカーのパタゴニアなど取材先は垣根を越えて多岐に渡ります。
「セルフエスティーム=自己是正感情」という言葉は初めて聞いたのですが、会社に雇われているからといって受け身に考えるのではなく、自分の仕事を「自分のもの」にする。仕事は自分を社会とを結びつけるためのメディアなんだ、と捉えて積極的に活用してやる。著者がいわんとする大まかなメッセージはそんな感じだと思います。確かに本書に登場する人たちは立場は様々ですが、仕事を「自分のもの」にしている人ばかりでした。実践者たちの紹介とインタビュー、加えて著者自身の考察と問いかけ、という構成になっているので「読み物」的なスタイルでとっつきやすいと思います。
一番印象に残ったのはシェイパー(サーフボードを削る職人)の植田義則さんの話です。波乗りを究めようと突き詰めていったところ、自分で板を削らなければ仕方なくなって、今では世界が認めるトップシェイパーになってしまった、という話で、結局突き詰めると「自分のためにモノを作る」という所に行き着くのかな、と思いました。
1年ほど前に大谷ゆみこさんやパタゴニアの人がゲストで参加する「スローワーク」がテーマのパネルディスカッションに行った事があるのですが、聴きにきた聴衆は定年で職を失った人とか、事業を始めたけどうまくいかない人、とかが多くて質疑応答タイムが切実な身の上相談会と化してしまっていたのですが、現実にスローワークを実践しているパネリストの人たちは至ってマイペースで、お金のことなんて全然考えてないんですよね。やっぱり大事なのはマインドの問題なんだ、という事がよく分かる体験でした。
風のまにまに号

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