
先日「すべては愛のために」を観た後からじわじわと気になり出していた事が、パッとこんな言葉になって頭に浮かんできました。今流行りの「オレオレ詐欺」と似ていますが、こっちは個人ではなくて国家規模の話です。いつまで経っても世界各地で紛争や貧困がなくならないのは、その地域の利権をめぐって大小さまざまな国や組織が甘い汁を吸おうと「俺も俺も」と群がっているからに他なりません。表面上は「治安維持」だったり「復興支援」だったりと大義名文を掲げているから、搾取されている側の人たちは何も分からず騙されてしまいます。これは世間慣れしてないボケ老人だったらまんまと騙されてくれるだろう、という「情報格差」につけこんだオレオレ詐欺の発想と何も変わりません。
「俺も俺も搾取」がいつから始まったのかというと、やはり欧米各国が 15世紀から行ってきた「植民地政策」という名の大略奪キャンペーンにまで遡ると思います。この辺りの事は橋本治の「二十世紀」を読むと分かりやすいのですが、元々西洋には国どうしの戦争のルールがちゃんとあって、「宣戦布告」をしてから戦地で戦闘をし(市街戦はありません)勝った方が事前に取り決めた領土をもらう、ということをやっていました。お互いを対等の立場としてある程度尊重しているからこそ、こういうルールが成り立つわけですね。ところが大航海時代以降にアジアやアフリカ、中南米の人たちに出会った彼らは言葉や文化の違う人々を未開の野蛮人と決めつけて一方的に搾取・占領してしまいました。「こいつらはルールの事なんか知らないから、勝手に奪ってしまえ」という相手に対する騙しであると同時に「こいつらは未開人だから人として扱わなくていいんだよ」という身内に対する騙し・言い聞かせでもあります。その結果「俺も俺も」と領土や資源を奪い合ってアフリカの地図などは定規で引いたようにデタラメに分断してしまったのです。
そして、イラクに自衛隊を派遣している日本政府は、今まさに「俺も俺も搾取」に参加しようとしている真っ最中だと言えます。池澤夏樹さんが先週のメルマガで書いているように、日本政府が名目として掲げている「国益」とはただの欲望に他なりません。そこにあるのは、欧米列強に組することできっと何か「おこぼれ」がもらえるに違いない、という根拠の薄い希望的観測だけではないかと思います。そして、アメリカも日本も国民に対しては「イラクの人々は復興支援を必要としている」とか「テロリストは悪者だから人として扱わなくていい」という植民地時代と変わらない「思い込ませ」をしきりに行って、私たちの価値観を麻痺させようといるのです。
橋本治の「二十世紀」は、人類が20世紀に歩んできた歴史を、著者独特の辛辣で、それでいて分かりやすく噛み砕いた文体で読み解いている長大作です。1年間に起こった出来事を見開き4ページに収めてそれを100年分書く、という非常に読みやすいスタイルでまとめられているので、「20世紀の歴史をまるごとレビューする」という感じの読み物になっています。こういう時は、日本や欧米が今までにどんなことをしてきて、それがどんな結果に終わったのかを、イチから軽ーく総ざらいしてみるのが一番ですね。それを体験するのに橋本治さんほどやさしいナビゲーターは、なかなかいないのではないでしょうか?4ページ単位と区切りがいいので暇つぶし感覚でランダムにページを開いて読んだりもできるので、「年表」代わりに一冊手元に置いておくのもオススメです。
風のまにまに号

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