次に、大長編ドラえもんのもう一つの要素である「遊びの世界の具現化」に比重を置いた作品に目を移してみましょう。
人形のように小さな宇宙人・パピと出会ったのび太たちが、プラモデルの戦車で宇宙戦争を繰り広げる「のび太の小宇宙戦争」や、偶然ガンダムのような巨大ロボットを手に入れたのび太たちが、地球に侵略してくるロボットの軍団と戦う「のび太と鉄人兵団」などは、いずれも当時の男の子たちが好んで遊んでいたポピュラーなオモチャを、実物大のサイズで楽しめたらどうなるか?という仮定のもとに想像力を膨らませたお話です。
実際の冒険のシーンよりも、「のび太の小宇宙戦争」の冒頭でスネ夫とジャイアンたちが作っている精巧なジオラマ映画や、「のび太と鉄人兵団」の冒頭でスネ夫が自慢しているおもちゃのロボットの方が、現実に手が届きそうで子供心にうらやましく感じたものです。そういう子供が大好きなトイ・ホビーの話題から、一気にめくるめく大冒険の世界に発展させてしまう軽快な話の運びがさすがですね。
そう考えてみると、「のび太の海底鬼岩城」に出てくる海中バギーも、当時の小学生に流行したミニ4駆にそっくりだし、作者がその時々の遊びのトレンドを取り入れながら、子供が物語の世界に導入しやすくするための小道具として活用していることが分かります。
これは大長編ドラえもんの原作が連載されていたコロコロコミックが、各種おもちゃメーカーと漫画の内容をメディア・ミックスで展開していたこと(ミニ4駆が流行ればミニ4駆の漫画、ファミコンが流行ればファミコンの漫画を連載..etc)と似ていますが、ドラえもんの場合はそれらをさらに一歩引いた視点でパロディ化して、独自の世界観に落とし込んでいるところが特徴だと言えるでしょう。
ところが、私がコロコロコミックを読んでいた小学生当時であれば、プラモデルやミニ4駆といったおもちゃがまだかろうじて主権の座を維持していましたが、その後の世代となるとファミコン、プレステ、ポケモンが全盛期というバーチャルな時代に突入します。そんな環境で当たり前に暮らしている子供たちに対して、常に新しいドラえもん像を提示し続けていくためには、舞台装置や小道具も時代に合わせて変化していかざるを得ません。そんな変化の兆しを、藤子・F・不二雄原作の後期作品群である「のび太とブリキの迷宮」、「のび太の銀河超特急」、「のび太のねじ巻き都市冒険記」等から感じ取ることができます。
風のまにまに号



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