「みんな心を入れ替えちゃったぞ!」
ひょっこりひょうたん島「グレートマジョリタンの巻」のレビューです。見事に魔女ルナを倒し、魔法のホウキを破壊したダンディでしたが、ふいをつかれて魔女たちにひょうたん森のかなたまで飛ばされてしまい、全身打撲で全治1週間のケガを負ってしまいます。それでも「マジョリンタワーで落ち合おう」というサンデー先生たちとの約束を果たそうと、ロック鳥に姿を変えたホウ助たちに頼んで運んでもらいます。ダンディのケガを気づかうホウ助に対して、「俺を小包だと思って運んでくれ」と返すセリフがめちゃくちゃクールです。ホウ助たちが、平時はひょうたん島の郵便事業を一手に引き受けていた、という事実もここで明らかになりましたね。
一方、豆の木の弾力で空のかなたに飛ばされていた博士とガバチョの2人は、グレートマジョリタンヘ帰港する途中のトラヒゲたちの船の上に落下します。運良くトラヒゲや海賊たちと合流した博士は、マジョリンタワーから持ってきたトラトゲたちのハートを返そうと説得を始めます。始めは嫌がっていたトラトゲたちですが、「ハートがないと損をする」と心のもたらす経済効果を説いて聞かせる博士の話術にほだされて、最後には皆口を揃えて「ハートを返してくれ」と言い出すのでした。


この様子を見ていたキッド坊やが無線機で魔女たちにつげ口すると、魔女パトラは船にかけられた魔法を解いてワニの姿に戻してしまいます。博士はワニに捕らえられて魔女たちの元へ連れて行かれ、ガバチョとトラヒゲ、海賊たちは海に溺れそうになりながら、なんとかグレートマジョリタンに上陸します。
さらに魔女たちは、マジョリンタワーを目指して荒野を進んでいたサンデー先生と子供たちを捕まえようと、魔法で出した自動車で追いかけます。間一髪で魔女たちを出し抜いた子供たちは、マジョリンタワーの頂上へ行こうと豆の木を登りますが、博士たちと同じく豆の木の弾力で空に飛ばされ、怪物の住む壁の向こうに落ちてしまうのでした。


今回気になるのはキッド坊やの行動です。スパイをきどって魔女たちに密告するばかりか、魔女パトラの言いつけでカウボーイさながらロープで博士を縛り上げてしまいます。これではスパイごっこも度が過ぎて、敵なのか味方なのかよく分かりません。海賊たちとひょうたん島住人が対立していた時も、キッド坊やだけはどちら側にもつかず、常に事態を混乱させる存在でしたが、彼を突き動かしている唯一の行動原理は「面白そうだから」というものです。
一昔前なら、こんな羽目をはずしたイタズラっ子もよくいたのかもしれませんが、今の時代の子供にはちょっと珍しい要素かもしれません。「イタズラ」をとことんまでやってみたらどうなるか?それを身を持って体現してくれているのがキッド坊やです。それでも今回ばかりは、魔女たちにいいように使われた挙げ句にあっさり捨て見捨てられてしまい、少しは懲りて勉強したようです。
彼がひょうたん島の中で果たしている役割は、善とも悪ともつかない「トリックスター」です。単純な勧善懲悪ものばかりの最近の漫画やアニメにはあまり出てきませんが、昔話や実際の歴史上には、古今東西このように毒気を持ったヒーローが活躍してきたものです。トリックスターと言えば、私も子供の頃「おそ松くん」に出てくるチビ太やイヤミがいい人なのか悪い人なのか分からず、どうにも釈然としなかった記憶がありますが、赤塚不二夫の描くキャラクターたちも、まさに善悪を超越したトリックスターそのものですね。幼い頃の私には、その奥の深さが理解できなかったようです。
「おはなしの知恵」河合隼雄
ひょうたん島にも登場した「かちかち山」のお話から、主人公にしてはあまりに残虐非道なウサギがトリックスターの典型である、と指摘して独自のトリックスター論が繰り広げられます。他にもおなじみの昔話の持つ意外な裏側を、社会学的に読み解くコラム集は目からウロコものです。
風のまにまに号

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