Amazonで陳舜臣の「チンギス・ハーンの一族」を買って読み始めました。この小説は私が高校生の頃に朝日新聞に連載していたのですが、そのときは途中で断念してしまったので、再びのチャレンジです。もともと私は内モンゴルに旅行に行って馬に乗ったことがあるほどのモンゴル好きなので、井上靖の「蒼き狼」と並ぶ数少ないモンゴル小説として、この作品ははずすことのできないマストアイテムだったのです。
井上靖の「蒼き狼」がチンギス・ハーンの青春とその半生のみを描いているのに対して、陳舜臣の「チンギス・ハーンの一族」はその名の通り孫の代のフビライ・ハーンと元王朝の興亡までを射程に入れているいるのでとにかく長いという印象があったのですが、実質的には文庫本にして4巻シリーズだったので、これならなんとか読めそうです。
なにより面白いのは、「蒼き狼」の書かれた時代と比べると、スケールも価値観も大幅にパワーアップしているということ。どうしても日本人から見たモンゴル像というのが、辺境に住む野蛮な騎馬民族という風に長年偏りがちだったと思うのですが、この小説の冒頭でいきなり登場するのはなんと十字軍戦争でイスラム側の英雄だったサラディンです。
そして後にチンギス・ハーンと深く関わることになるナイマン国のマリアという女性が登場するのですが、彼女はその名が暗示する通り、ネストリウス派のキリスト教徒という設定です。この導入部分が示唆しているのは、私たちには想像もつかないほどワールドワイドに人やモノの交流が展開されていた当時のモンゴル帝国と中央アジア世界。そして、そんな舞台で繰り広げられる様々な人たちによる群像劇なのです。
そういった目新しい世界像を提示できるのも、最新の学説を取り入れた作者の博識によるところが大きいと思います。これなら楽しみながら、知られざるモンゴルの歴史を総ざらいできそうです。読み進んだら、また感想をアップしたいと思います。
⇒陳舜臣「チンギス・ハーンの一族 (1)」
⇒陳舜臣「チンギス・ハーンの一族 (2)」
⇒陳舜臣「チンギス・ハーンの一族 (3)」
⇒陳舜臣「チンギス・ハーンの一族 (4)」
⇒井上靖「蒼き狼」
ところで、モンゴルネタと言えば今ビッグコミックスピリッツで連載している「女神の赤い舌」という漫画も、実はれっきとした「モンゴル漫画」だったということが最近になって分かりました。



「女神の赤い舌」・・というストーリーなのですが、このハーン教の女神となった少女・リカが凶暴な面を持つ多重人格者で、魔法のようなとんでもない超能力を使ったり、とにかくハチャメチャな展開が面白い漫画なのですが、なんとこのリカが前世においてチンギス・ハーンの恋人だったということが明かされ、冷凍保存されていたチンギス・ハーンや側近の耶律楚材を魔法で生き返らせてしまう、という奇想天外な展開になってしまいました。そういえば最初から「ハーン」教と言っていたし、もともとこういう構想だったんですね・・。
失踪してしまった恋人・リカの行方を探してタイに旅立った主人公・鉄男が、タイの山奥で「ハーン教」と名乗る怪しげな宗教団体の教祖となり果てたリカと再会し、やがてハーン教をめぐる争いに巻き込まれていく。
エキゾチックな土地を舞台に、笑いありアクションありで展開される、独特なコミカルな味のあるこの漫画ですが、根底に流れるテーマは「愛」と「孤独」という感じがして、等身大に悩み苦しむ登場人物たちに共感できます。なんだかちょうどクライマックスという感じで、もうそろそろ最終回を向かえそうな予感がするのがちょっと残念ですが、数少ないモンゴル漫画として最後まで応援したいと思います。
↓「女神の赤い舌」s-book.comの紹介ページ(表紙をクリックすると中身を「立ち読み」できます)
⇒「女神の赤い舌」第1巻
⇒「女神の赤い舌」第2巻
⇒「女神の赤い舌」第3巻
風のまにまに号

コメントする