時計館の殺人

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book_tokeikan.jpg綾辻行人の「時計館の殺人」を読みました。こちらも新本格系の長編推理小説の名作で、「双頭の悪魔」に負けず劣らずぶ厚い文庫本でしたが、読み終わってみても決して長いとは感じず、読み進むほどに淡々と明かされていく「館の謎」に興味津々のまま、音楽に身を委ねるように結末まで持って行かれた感じです。10年前に亡くなった少女の霊が出ると噂される「時計館」という館に、雑誌編集者と大学のミステリー研究会の面々が取材の目的でやって来ます。ところが閉鎖された館の中に閉じこめられてしまった彼らを、次々に凄惨な連続殺人事件が襲いかかります。その間、遅れて館にやって来た駆け出しの推理作家・鹿谷は、館の外で独自に調査を進め、館にまつわる壮大な謎に突き当たることになります。
一応は推理小説なので殺人事件が起こって、その犯人とトリックを暴いていく、というプロットが中核にあるのですが、それをも覆い包むほど壮大な館にまつわる謎と歴史というストーリーラインが背景として横たわっていて、読み終わってみるとむしろそっちの方が主役という気がしてきます。

そういう意味では、必ずしも「殺人もの」ではなく、例えば「冒険小説」のような形で館の謎を明かしていくスタイルでも、話としては成り立つわけで、ちょっと不思議な感じがするのですが、極限までパターン化した「推理小説」という形式が、何かを物語るための道具として成り立ってしまう、ということの好例だと言えるのではないのでしょうか?

今は亡き館の主(時計会社社長)が、妻に先立たれて、残された最愛の娘のために建設したという奇怪な屋敷。巨大な時計塔と百八個の時計コレクションに囲まれて、壁には窓もなく、入口を強固な扉に閉ざされている、という設定自体が人が住む家としては「非現実的だ」と思ったりもするのですが、それらの点にも最後には全て論理的な説明をつけてくれます。殺人の犯人やトリックを推理するだけでなく、「なぜこんな館を建てたのか?」というそっちの謎も解かなければ、このお話の全てを解いたことにはなりません。
また、館の主を始めとして、館に関わる主要な人々のほとんどが既に故人なので、この2つのストーリーは「死者の物語」と「生者の物語」という風に分けて考えることもできるんですね。「死者の物語」を語るために、そこに集まった生者たちが殺人劇を繰り広げて、「悪夢」を再現している、というなんとも複雑な物語構造ですが・・。

タイトルからして「時計」という単語が含まれているので、何らかの「アリバイトリック」が使われていることはなんとなく想像できるし、犯人像もおおよその見当がつく範囲のものなのですが、それら殺人のトリック・犯人当ての謎解きを、もう一つの謎(館の謎)とダイナミックにリンクさせて、終盤で一気に氷解させる、という緻密な組み立てはさすがだと思いました。推理の過程自体は割とあっさりしてるのですが、仕掛けが大がかりなだけに読み終わった後に訪れるカタルシスが、より重厚なものになってますね。

ただ一つ気になったのは、むやみに人が死に過ぎることと、殺人シーンの描写がリアルなことです。例えば、有栖川有栖の小説などでは、語り手である主人公(助主役)や探偵が直接見聞きしたシーンしか描かれず、読者も彼らと対等な限られた情報の中から推理することを促されるのですが、綾辻行人の「時計館の殺人」では主人公はおろか、誰にも伝聞されるはずのない被害者の殺される直前の情景や心理描写などが頻繁に描かれています。このシーンが微妙にヒントになってたりもするのですが、読者の恐怖感を煽る演出という役割がメインになっているので、個人的にはちょっと怖かったです。その辺はやはり同じ本格の中でも微妙にジャンルが違うのかな?と思わせるポイントでした。

それにしても、なぜか不気味な館に閉じこめられてしまって、館の言い伝えやら暗号やらを解いたら、最後はなぜか館が崩壊してしまう、という展開は「名探偵コナン」でもよく出てくるパターンなので、どこが一番最初の元ネタなのか分かりませんが、これも推理ものでは使い回されている一つの定番ジャンルなのかな?という気がします。

ともあれ、綾辻行人の「館」シリーズはまだまだ気になるので、次は一作目の「十角館の殺人」あたりを読んでみたいと思います。(「囁き」シリーズの方は怖くてちょっと読めませんが・・)

「時計館の殺人」綾辻行人

コメント(2)

こん○○は。
綾辻行人の本は、「十角館の殺人」を昔読みました。
久しぶりに面白い本を読んだなぁと思い、いつか他のも読んでみようと思っていたのですが、結局読まず仕舞い。
youthkeeさんのこの記事を読んで思い出しました。
早速、読んでみますね。
なんとなく思い出したので書き込みました。
では。

teramoさん、こんばんは。
十角館の殺人の方も面白そうですね。楽しみに読んでみたいと思います。
続編を楽しみにできるシリーズがあるっていうのは、ほんとに幸せなことですよね・・。

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多摩川のほとりでのんびり暮らす3人家族の日常と果てなき好奇心を綴ったブログです。

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