グランマ・モーゼス展―失われゆく風景

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moses050126-1.gifBunkamuraのザ・ミュージアムで1/30(日)まで開催されている「グランマ・モーゼス展」のレビューです。グランマ・モーゼスはアメリカの素朴な農村風景を描き続けた農村画家で、本格的に絵を描き始めたのはなんと73歳になってからだというから驚きです。画家として有名になった後も、今まで通り農民として生きることを選び、親しみを込めてモーゼスおばあちゃん(グランマ)と呼ばれるようになったそうです。私がポスターで見かけて一目で気に入ったのは、雪景色の広がる農村風景の中に、ところ狭しと人や動物たちが描きこまれているカラフルな点描画だったのですが、展覧会場ではより自然の営みが感じられるように、あえて年代順ではなく、春夏秋冬の流れに沿って作品を並ベていました。

グランマ・モーゼスの作品のいいところは、田畑や家や木々、その向こうに広がる空や山並み、そしてそこに暮らす人々や牛や馬や鶏といった小さな動物たち・・・、そういう全てのものが一枚の絵の中に描きこまれて、さながら「小世界」を成していることです。だから必ずしも写実的な法則に厳密ではなく、例えば画面後方に描かれている虹や気球を、はるか手前にいるはずの人々が仰ぎ見ている、という遠近法的にはちょっと不自然な描写も出てくるのですが、それも見ているうちに段々と、人と自然が一つになっている一体感の表現として捉えられるようになってきます。

グランマ・モーゼスの絵を見ていると、きっと彼女はこんな素朴な田園風景に囲まれて暮らしていたんだろうなぁ、と思ってしまうのですが、会場で上映していた解説ビデオを見たら意外な事実が明らかになってきました。というのは、グランマ・モーゼスが絵を描き始めた頃には、農業の世界にも近代化の波が押し寄せていて、彼女の絵に登場するような昔ながらの田園風景というのは既に失われつつあった、というのです。

次々に失われていたからこそ、美しい昔の風景を必死で後世に残そうと、記憶を頼りに再現したのが、グランマ・モーゼスの作品世界だったのです。そのためには、もちろんおぼろげな記憶だけでは不充分で、彼女が個人的に収集していた新聞写真の切り抜きや農器具の資料などのイラストカットを、巧みに絵の中に引用して組み込ませることで、過去の原風景を蘇らせていたそうです。そういうリミックス的な手法で作り上げていたのだから、そもそもが写実的なはずはなく、さながら農村における人と自然の暮らしを綴った一大絵巻、モーゼスおばあちゃんの農村版・マンダラともいうべき作品だったのです。

今回展示してあった中で一番印象に残ったのは、「ピンク色の虹」が描かれたグランマ・モーゼス最後の作品です。彼女が101歳で亡くなる直前に描き残したこの作品は、空にかかった大きな虹を、農民や恋人たちが幸せそうに見上げている、という楽園的な風景なのですが、ピンク色がかった独特の色合いが何よりも印象的でした。私の直感では、この「ピンク色」というのは、グランマ・モーゼスの中で幸せの色なんじゃないかな?と思っているのですが、思えば他の絵の中でも、山の向こうに微かに覗く日の光や、美しく空にたなびく雲の色も幸せそうな薄いピンク色に色づいていました。こういう微妙な色使いや空の描き方は常に自然を見ながら暮らしていた農村画家ならでは境地なんでしょうね・・。

Bunkamura ザ・ミュージアム「グランマ・モーゼス展」 2005/1/2(日)~1/30(日)

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多摩川のほとりでのんびり暮らす3人家族の日常と果てなき好奇心を綴ったブログです。

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