Bunkamuraのル・シネマで上映している「恍惚(Nathalie...)」のレビューです。夫に浮気癖があることを知った妻が、バーで知り合った娼婦を雇って夫を誘惑させ、情事の一部始終を報告させようとする・・。話の大枠だけ聞くと、ほとんど三流のメロドラマみたいなストーリーを連想してしまうのですが、そうはならないのが役者も演出も超一流ゆえのすごいところでしょう。娼婦役を演じるエマ二ュエル・ベアールは色っぽいだけでなくどこか品があるし、時折見せるチャーミングな表情には目が離せません。妻役のファ二ー・アルダンが演じる、美しく気品ある、セレブな奥様ぶりもすごくカッコ良くて、場違いな会員性クラブに入っていくシーンや、カフェでうらぶれて煙草を吹かしてる時ですら、妙に様になってるんですね・・。この2大女優の一挙手一投足を眺めているだけでも、充分に堪能できてしまうのですが、それをさらに盛り上げてくれるのが、各シーンを彩るマイケル・ナイマンの情感豊かな音楽です。ちょっと奇妙な物語に身を委ねながら、極上の時間を過ごすことができる、そんな一本でした。
不倫映画と言われて私がまっさきに思い浮かぶのはフランソワ・トリュフォーの「柔らかい肌」ですが、この映画の場合は「柔らかい肌」と全く逆の、浮気される妻の側の視点を通して物語が進行していきます。「ナタリー」という別人格を演じる娼婦・マルレーヌと夫・べルナールとの情事も、マルレーヌの語る伝聞をもってのみ描かれ、直接的なシーンは一切出てきません。そんな報告を聞くだけの妻・カトリーヌの立場になって、観客もただ過ぎ行く事態の新展を見守るはめになるのですが、個人的に「柔らかい肌」の衝撃的なラストシーンが一種のトラウマになっていただけに、この映画も一体どんな結末になるのかと、ドキドキしながら見入っていました。


ところが見ているうちに、結末がどうこうというよりも、「夫の話」を共有することで徐々に奇妙な連帯感を抱いていく2人の女たちの関係や、途中細やかに垣間見せる彼女たちの何気ない日常といった部分こそが、この映画の主要なエッセンスなんだなぁ、ということが分かってきました。お金をもらえば誰とでも寝るというプロを自負しながら、やがて純粋なもう一人の分身「ナタリー」に感化されていくマルレーヌ。一方、自ら医者として経済的に自立しているからこそ、娼婦を雇って独自に調査したりできるカトリーヌですが、夫の心まで奪いかねないマルレーヌの存在を疎ましく感じ始めながら、彼女との間に芽生えた友情にも似た感情を捨て去ることができない・・。
そういった感情の入り混じった不思議な人間模様を、女性監督ならではの感性で悠々と描ききったところが、この映画の一番の見どころではないでしょうか?ちょっと意外なラストシーンまで、長い時間をかけて淡々と映し出される内面劇ですが、最後まで全く飽きさせず決して長いと感じませんでした。観ている方も興奮やら共感やらと、同時多発的な感情に襲われる不思議な映画だったような気がします。例によって「恍惚」という邦題だけは、どうにもいただけませんが・・。
それにしても、とても39歳とは思えないエマ二ュエル・ベアールの若さと美貌にはほんとに驚くばかりですね。観終わった後に今の実年齢を知ってちょっと信じられませんでした。「美しき諍い女」とはまた全然違った魅力でしたが、この映画でもすごく強烈なキャラクター性を感じました。
風のまにまに号

こんにちは、始めまして。
「風のまにまに号」さんのテンプレート使わせてもらってます。日々少しずつですがカスタマイズを重ねております。
たまたま、エマニュエル・ベアールの記事を自分のとこへ掲載していたので、こちらへTB&コメントさせて頂きました。
よろしくお願いしますー。
tomyさん、こんにちは。
ムービーの方拝見しました。面白いCMですね!VodafoneってあんなCM流してるのか~、と思いました。
テンプレートの方もいい感じにカスタマイズされてますね。ご愛用いただきありがとうございます。