この日は珍しく早く目が覚めたので、朝食前の散歩がてらLowsonfordの町の様子を見て回ることにしました。ボートを停めた所のすぐ目の前に、昨晩夕食を食べた巨大なパブがあり、その後ろに幹線道路と町並みが広がっているのですが、そこまで行くには再び橋のところまで戻って、ぐるっと回り込まなければなりません。朝の光に照らされた家々は昨日とはまた印象が違って、どの家も大きくて綺麗に手入れされた庭に囲まれているので、まさしく「理想の家」といった趣を感じさせます。ただ、歩いていてもあまり人気を感じないので、パブにもたくさん駐車場があったように、この辺まで来ると車での移動が主体になっているのかもしれません。ナローボートだったらそんな田舎の住宅地のただ中に、突然ぽっかりと出現することができるのが、他にはない旅の楽しみだと思うのです。


写真左:対岸で朝もやに包まれるウォーキーズ号。
写真右:この日の朝食は色とりどりのチーズとハムの盛り合わせ。
朝食を食べたらエンジンを始動して、再び運河の旅へ出発です。淳子さんが渡してくれた鴨のエサを川面に投げ込むと、とたんに付近にたむろしていた鴨たちが飛びついてきて、走り出したボートを追いかけながらどこまでも「パン食い競争」が続いてしまいました。鴨たちが泳ぐのと同じゆっくりのスピードなので、まるで旅の道連れができたような気分が味わえます。次第に他のボーターたちの姿も見え始め、私たち夫婦もいつもながらの水門越えのミッションに取りかかりました。


先へ進むと、以前こちらのレポートでも写真を紹介した子供連れの家族が乗ったナローボートと出会いました。元気いっぱいに屋根の上を闊歩している彼女たちですが、決していたずらっ子というわけではなく、甲板のないナローボートでは屋根の上を歩くのも割と普通のことなのです。彼女たちとは進行方向が一緒なので、その後もたびたび水門で出会うことになりました。そして、何やら大きな機材を運搬する運河管理局(British WaterWays)のボートにも遭遇しました。ボーターたちが支払う船舶登録料などを元に、彼ら管理局の人たちが古くから残る運河を綺麗にメンテナンスしてくれているのだそうです。


印象的だったのが、運河とハイウェイが交差するシーン。私たちのボートがゆっくり進むすぐ上の陸橋を、長距離トラックや車がビュンビュンと通り過ぎていく姿が、非常に対照的でした。ナローボートと運河を取り巻く世界が、外界と切り離された特殊な時間軸の中にあることを、改めて実感させられます。そうはいっても、一歩船を降りたら、普段生活している私も「あっち側」の世界で暮らしているわけですが・・。

さて、この日は初日からはるばる遡ってきたストラトフォード運河から、運河の交差点であるKingswood Junctionへと到達しました。ジャンクション(Junction)とは、その名の通り運河と運河が交わる所なので、前回訪れたCanal Shopよりも大きなマリーナがあるし、水門も水路もたくさん入り組んでいる巨大施設です。淳子さんは早速水の補給や船のメンテナンスに取りかかることになったので、私たち2人はジャンクションの敷地内を見学して回ることにしました。


ジャンクションには橋や水門小屋などがたくさんあって、歩いているだけでも楽しいし、あちこちの運河からボートやボーターたちが集まっているので、まるでのどかな水上都市に迷い込んだかのような気分が味わえます。ただ、密集地帯なので水路や水門での運転はちょっぴり難しいらしく、私たちの通る目の前でボートに乗った老夫婦が運河に落ちてしまう、なんてアクシデントも目撃してしまいました。(その後、そのおばあさんは周囲の人々の助けで無事救い上げられていましたが・・)




ジャンクションの敷地内には大きな池などもあり、釣りを楽しんだりと、ボーターや付近の住民たちの憩いの場になっていました。


さて、Kingswood Junctionの水門を全て通過すると、今度はストラトフォード運河からGrand Unionという運河へと入ります。こちらは運河というより川に近いため、横幅も視界もぐっと広くなり、かなりゆったりとした航海になりました。これだけ広ければ、他の船とすれ違うときも大分余裕があります。そして私たちを乗せたウォーキーズ号は、これからHeaven's Lockと呼ばれる「究極の水門」を目指して進んでいくことになります。(続く)

風のまにまに号

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