箱根、芦ノ湖の輝くような水面を見てきたせいか、急に田口ランディさんの著書である「水の巡礼」が読みたくなった。この本は日本各地にある聖地を、水をキーワードに巡ったルポタージュ本なのだが、そこに登場する人物が只者ではないのでかなりおもしろい。超能力者の秋山眞人さんや清田益章さん、占星術師の松村潔さんやアイヌのシャーマン、アシリ・レラさんらが登場し巡礼という名の旅に花を添えている。私は高校生のとき北海道でアシリ・レラさんに偶然にもお会いしたことがある。高校の修学旅行で二風谷に一泊する予定で、空き時間に村を散歩していたときだった。
そのときの風景は今も私の脳裏に焼きついている。まず、私の目に入ったのはアイヌの「チセ」とよばれるかやでできた小屋だった。そこをこっそりのぞくと明らかに人が寝泊りしている気配。なんだか縄文時代にトリップしたような気持ちだった。そして偶然レラさんの家の前で畑仕事をしているレラさんとお会いした。
私はレラさんにあって初対面なのにもかかわらず、そのときの正直な気持ちを話していた。私がそのとき感じていたのは二風谷に行く前に1週間の酪農実習中に行った畑仕事であまりにも広い畑で苗を植えていて疲れてしまったこと、小さい畑を見るととても落ちつくということだった。
「水の巡礼」にもでてくるが、かつて北海道は森だった。そこに狩猟や採取をしているアイヌたちがいたが開拓民が入り森を畑や酪農の土地に変えていったのだ。私は見たこともないような広い畑で作業をしているときになんだか自分が機械になってしまったような気分になった。そんな気持ちを引きずったままだった私はレラさんの小さな畑やレラさんの仲間が取ってきた山菜をみたら心がすごく落ちついた。
その後レラさんのおうちに招いてもらって短い時間だったがいろんなお話を聞いた。レラさんのもとにいろんな事情で子供があずけられること、アイヌの文化の継承についてやダム建設の反対の話などなど。修学旅行で私はいろんな人に会ったが、レラさんにお会いしたことは私の中に大きな暖かいものを残した。
レラさんはアイヌとしてのアイデンティティをきちんとした形で次世代に継承したいと考えていることが伝わってきたからだ。自分の信じることを行って次世代に伝えること、それは時と場合によってかなり難しい。それなのに信念を貫く姿勢が素晴らしいと思った。
話はそれてしまったが、この本の中でランディさんとレラさんたちは富士山に行き、そこでアイヌ式の神事をとりおこなうことになる。レラさんはいう「私のことは信じなくてもいい。私はただの人間だからね。でも神様がいることは信じておくれ」と。アイヌは自分たちの思いどうりにならないもの魚や作物から自然のあらゆるものに神が宿ると考えている。
私はその考え方が素晴らしいと思える。私たちは自然の摂理の中に生きているのだ。自然の中のひとつ水は特にいろんな情報を映し出す媒体として存在し私たちを育ててもくれる。私たちは日々水に感謝して生きなければいけないのだろう。そんなことを感じながらこの本を読んだ。
風のまにまに号

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