人生を自由に操ることのできる究極の『リモコン』を手に入れた男の悲喜劇を描いたSFコメディ。邦題が「もしも昨日が選べたら」となっているのですが、実際には昨日を選ぶことはできないので、ちょっと邦訳がミスチョイスなのではないかと思うのですが(原題は"CLICK")、強いて言うなら「人生リモコン」とでもいったところでしょうか?とある会社で建築士として働く主人公は、美しい妻とかわいい子供たちに囲まれ、幸せな家庭を築いていましたが、常に出世のことばかり気にして家庭を顧みない一面も・・。そんな彼が偶然手に入れたのは、テレビや電化製品だけでなく、自分の身に起こる全ての現象をコントロールできる『万能リモコン』。うるさい妻との口喧嘩はスキップできるし、通勤時の渋滞もラクラク、出世するまでの地味な苦労も全て吹っ飛ばして、一気に未来まで『早送り』できるのです。夢のようなリモコンの魔力に次第に溺れていく主人公でしたが、便利な機能の裏に一体どんな副作用が待ち受けているのでしょうか・・?
この映画の面白いところは、人生を一枚の『DVD作品』に見立てて、リモコンで自由に再生・コントロールしようと考えたところです。DVDのように「MENU」画面を開いて、自分の人生に起こった過去のシーンを「再生」することもできるし、これから起こる未来の出来事を「早送り」したり「スキップ」したりできるのです。まるでDVDを見るかのように、お気軽に人生を操れてしまうのですが、当然早送りした部分は自分の実体験として残ってないわけだから、途中を見ていない映画のように「どうしてこんな展開になったの?」と戸惑うこともしばしば・・。
10年20年先の未来まで平気で飛んでいってしまうので、めまぐるしい展開に思わず空恐ろしいものを感じてしまうのですが、万能リモコンの不思議なテクノロジーと合わせて、地味に未来の発展した社会が描かれているのも、ちょっとした見どころです。知らぬ間に出世した自分の姿を他人事のように感じながらも、すっかり荒廃した家庭環境に愕然とする主人公。「それでも、それは自分の選択したことなんだよ」と言うリモコンの番人・モーティのセリフには、身につまされるものがありました。
誰しも、「こんなシーンは早送りしたい」と生き急ぐ気持ちはあるものですが、そういう面倒くさいと思うシーンにこそ、人生の本当の価値があるのだということを、追体験しながら教えてくれる、そんな映画でした。いつもファーストフードばかり食べてる主人公が、人生そのものを短縮してしまうところも何やら象徴的ですね。自らプロデューサーもこなした、コメディ俳優アダム・サンドラーの演技も光っているし、とにかく美しすぎる妻役ケイト・ベッキンセールの共演も花を添えていて、それだけでも見る価値ありだと思います。
風のまにまに号

コメントする