昨日東京ドームシティのJCBホールで開催された「エミール・クストリッツァ&ノー・スモーキング・オーケストラ来日公演」に行ってきました。「黒猫・白猫」や「アンダーグラウンド」などの作品で有名な映画監督エミール・クストリッツァが、自らギタリストとして参加するバンドで、彼の映画作品に登場するロマ(ジプシー)の人々が奏でる音楽と同じく、激しく熱情的でありながら、全てを吹き飛ばすような笑いと躍動感に満ちています。パワフルなブラス・サウンドをベースとしながらも、ジャズ、ラテン、スカ、ハードロックなどあらゆるジャンルを取り込んだ独特の音楽性は、ひと言で何と形容していいのか難しいところ・・。実際会場へ足を運ぶまで、どんな客層の人たちが集まるのかちょっぴり疑問だったのですが、ホール狭しと集まった満員の来場客たちは、ステージ開始前から一種異様な熱気に包まれていて、公演が始まった途端に総立ちのスタンディング・オベーション!彼らは決してミュージシャン単体として有名なわけでもなく、まして初来日公演だというのに、これだけガッチリとファンの心を掴んでいる一体感は何なのでしょう・・?
昔映画を観て虜になった人や、コアな音楽ファンなど立場は様々でしょうが、まるで何年も前から彼らのステージを共有しているかのような熱狂が、会場全体を包み込んでいました。我らがクストリッツァ監督が目の前でギターを弾いているのも、もちろん嬉しいのですが、ステージや会場内を所狭しと飛び跳ね、動き回るヴォーカルのドクトル・ネレや、バンドの面々が皆愉快で楽しく、次に何が起こるか分からない可笑しさが溢れたライブ構成なので、見ているだけで気分が盛り上がり、楽しくなってしまうのです。
例えば、幕間で会場から女性客の一人をピックアップして壇上に招き上げたかと思えば、突然メンバー全員で寄り添い、愛のメロディーを奏で出したりと、『客いじり』にも余念がありません。続いて、その女性に「日本語で"Are you ready?"って何て言うの?」と振ったのですが、彼女が「すみません、なんて言ってるか分かりません」という態度を取ると、ヴォーカルのドクトル自ら「ヨーイハイイカー!?」と叫び出す始末。(「知ってるんじゃん!」というツッコミはさておき)目の前でこんなことをやられると、大抵の人は頭のネジが飛んで真っ白になってしまいます。
個人的に一番良かったのは、映画「アンダーグラウンド」のテーマ曲。無限に高鳴るんじゃないかと思われるほどアップテンポの2ビートに、所々で「チャン、チャン、チャン」とオチをつける展開の繰り返し。手拍子で着いていくのもやっとといった感じですが、こういった無限にループする曲の構成を延々聞かされると、日々の雑事を忘れ、全てがどうでもよくなってしまうような、不思議なトランス状態に入ってしまうのです。
これは10年ほど前に映画の「アンダーグラウンド」を観終わったときの感覚と同じ・・。あの映画の中でも、血みどろの民族同士の抗争、親友同士の裏切り、そういった重いテーマを扱いながらも、そんな怨みつらみも全てチャラにしてしまうような、根源的な音楽のパワーを感じさせてくれたのが、この曲だったのです。それを生で聴く機会が来るとは思いもしませんでしたが、やっぱりライブならではの迫力で、感動もひとしおでしたね・・。
アンコール後の最後の挨拶でドクトルが客席に向かって言っ言葉は、「おまえら、世界中で一番愛してるぜ」。日本語をここまで勉強してくるミュージシャンもなかなか珍しいと思うのですが、外国人のセリフとは思えないほど、その場にふさわしく、心に残るメッセージでした。演奏の途中で「Are you ready to make a revolution?」と振られたクストリッツァが、「Next Time.」とはぐらかす(?)シーンなんかもあったのですが、これは次回作の映画で『革命』を起こすよ、という予告発言にも受け取れますよね?
いずれにしても、映画監督としても、ミュージシャンとしても目が離せない、クストリッツァと愉快な仲間たちの活躍を、今後とも心より期待したいと思います。まだ彼ら独自の“Unza Unza(ウンザ ウンザ)ミュージック”を聴いたことがないという方は、まずは映画のDVDやサントラでぜひ聴いてみてください。
<関連ページ>
・エミール・クストリッツァ&ノー・スモーキング・オーケストラ公演情報
・「The No Smoking Orchestra」公式サイト
・asahi.com(朝日新聞社):人種のるつぼ表現 映画監督クストリッツァのバンド初来日
・ノー・スモーキング・オーケストラ:きょう初来日公演--JCBホール /東京 - 毎日jp(毎日新聞)
風のまにまに号



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