本日発売したYUIのカップリング・ベスト「MY SHORT STORIES」を聴きました。前作アルバムに収録されていた「Love is all」で、商業主義と自分のやりたい音楽との間で葛藤する内面を吐露していたYUIだけに、ある程度予想のできる行動ではあったのですが、その後公の場での活動休止を宣言し、音楽業界の表舞台からいったん姿を消すことになってしまいました。今回の「MY SHORT STORIES」は、過去のアルバムに収録されなかったカップリング曲をアルバムとして再構成した、オフィシャル的には4thアルバムと位置付けられるものです。活動休止中とはいえ『お金』を生み出さなきゃいけない、というレコード会社の都合も見え隠れしつつ・・、なんて勘ぐってしまうと、まるでYUIの歌のような皮肉になってしまいますが、実際聴いてみるとどの曲も甲乙つけ難く、時を経てもクオリティの高さを感じさせる充実した内容となっていました。同時に成功の階段を駆け上ってきたYUI自身が、孤独や自分への問いの中で、繰りかえしもがいてきたという本音も浮かび上がってきます。新曲「I'll be」をはじめ、奇しくも『応援歌』ばかりが揃ったようにも見えるこのアルバム・・。これを聴いて勇気をもらったら、今度はYUIを応援しよう、という気持ちになるのでした。
歌を通して自分を語り続けるYUIのアルバムを『小説』と例えるなら、今回の「MY SHORT STORIES」は今まで語られてこなかった『行間』の部分、あるいは『外伝』的な位置付けと言えるのではないでしょうか?過去の楽曲と聴き比べながら、自分なりにストーリーを組み立ててみると面白いかもしれません。
新曲の「I'll be」は、ウォークマンのキャンペーンソングということで、若者へ向けた応援歌という『お題』をそつなくこなしながらも、YUIならではの感性が色濃く滲み出た一曲に仕上がっています。人生なんて、嫌なことがあっても、ウォークマンみたいにPlay(再生)ボタンを押せば、なんとか動いていくものさ・・。そんな励まし方は、いかにも現代っ子らしい即物的な発想だと思うのですが、「Oh My God」の中でも「人生なんて曖昧だ」「平等なんかじゃないよ」と歌いきっていて、そういうある種冷めた目線こそが、多くのファンの共感を呼ぶ秘密なのかもしれません。
「I'll be」の歌詞でも「嫌なことがあったら好きな歌を聴いてみて」と歌っているのですが、続く「Winter Hot Music」では、YUI自身が日々音楽を聴くことで、心の栄養補給をしているという『音楽中毒』ぶりを吐露しつつも、実況中継スタイルの語りを取り入れたYUIソングの真骨頂を発揮しています。
個人的に特に気に入ったのが、インディーズ・テイスト溢れる「Jam」。「パンクロックが生きた時代は今でもずっと続いてる」というフレーズなど、普通にカッコいいのですが、「明日テレビだよと電話が鳴る、ごめんね帰らなきゃ」というセリフなどを聴くと、この歌がリアルタイムなYUIの日常とリンクしていることが窺われます。一本『いつ、誰』のことを題材にしているのか、思わず気になってしまうのですが、そういった虚実入り交じったドラマ性も、YUIの歌の魅力の一つではないでしょうか?
初回生産限定盤に付属するDVDには、3曲のミュージック・クリップの他、今年行われたツアーライブの映像が収録されています。このライブ映像、ただでさえ貴重なステージの様子が垣間見れるだけでなく、YUIがツアーで全国を回るついでに、各地の商店街でゲリラ的に行なった路上ライブの映像を織り混ぜた構成となっているので、要注目です。
突然YUIが街に現れ、ストリート時代と同じようにギター一本で歌い出す様子を、現地の通行人たちが驚き混じりで見守るというドキュメンタリー・タッチの構成は、実にリアルな臨場感に溢れていました。何よりアットホームな気分で、気持ち良さそうに歌うYUIの表情が印象的です。テレビやライブで歌うときは、妙にマイクに口を近づけて歌う人だなぁ、とは思っていたのですが、マイクを通さずに肌で伝わる距離感・・。それこそが、彼女にとって最も自然なスタイルなのかもしれません。
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