
一昨日発表された第82回アカデミー賞でも長編アニメーション部門を受賞したことで話題の「カールじいさんの空飛ぶ家」
ですが、なかなか観に行く機会がないと思っていたところ、先日ハワイへ旅立つ際のJALの機内でたまたま上映していたので、観ることができました。スクリーンこそ小さいものの、空飛ぶ飛行機の中で観る「カールじいさん」はまた格別で、ちょうどカールじいさんの家が飛び立つシーンで気流の揺れがグラグラ来るなど、リアルな臨場感を感じることができました。家にいながらにして大空を旅するという発想も去ることながら、この作品の根底に込められたメッセージが「日常こそが冒険である」というものだと知り、より深く感情移入することができました。まさに「風のまにまに号」のテーマそのものですね!
冒険好きの少年カールは、同じく冒険好きの少女エリーと出会い、意気投合。その後、2人は結婚し、幸せな家庭を築きます。子供に恵まれなかった2人の唯一の希望は、いつの日か子供の頃に夢見た秘境「パラダイス・フォール」へ行くこと。ところが、日々の雑事に追われるうち、その夢はなかなか実現しないまま時が経ち、やがて老いたエリーは病気で先立ってしまいます。
立ち退きと老人フォームへの収容を余儀なくされたカールじいさんは、エリーが子供の頃に書いていた「冒険ノート」を引っ張り出して一念発起。エリーと暮らした終の棲家に無数の風船を取り付けて空を飛び、家ごとパラダイス・フォールを目指して旅立ちます。そこへボーイスカウトの少年ラッセルや、言葉を話す犬・ダグなどが加わり、思いも寄らぬ冒険に巻き込まれてしまうのでした。
ここで面白いのがカールじいさん、単に家を乗り物にしているだけでなく、家を運ぶのが目的というところです。その昔エリーと共に描いたイメージが、パラダイス・フォールの滝の上に理想の家を建てる、というものだったので、そのイメージ通りに二人で暮らしたわが家を運んでしまおうと言うのです。ここまで子供の頃に描いた夢を忠実にかなえようとするカールじいさんの奮闘は、見ていて涙ぐましいものがありますよね・・。
カールじいさんの家が大空を駆け巡る、雄大な飛行シーンは実に爽快なのですが、思いのほか早く空の旅は終わってしまい、後半は地上での冒険がメインとなります。この辺が、個人的にはちょっぴり残念なところですが、製作費の兼ね合いといった大人のお財布事情があったのかもしれません。それでも、この映画の一番の見どころは、この後半部分の「夢がかなった後」のお話なのです。
パラダイス・フォールを目指す過程で、カールじいさんはその昔パラダイス・フォールを発見した伝説の冒険家チャールズ・マンツと出会います。カールじいさんとエリーにとっては憧れの存在だったマンツですが、自分の夢に固執するあまり、今では他人を信じられない偏屈な世捨て人と成り果てていました。このマンツとカールじいさんとの対比が面白いのですが、あくまで「エリーのために」他人の夢を叶えようとしているカールじいさんは、堅物のマンツと比べて柔軟で頭の切り替えが早いのです。
自分のためではなく、あくまでも利他的に他人の夢を応援するカールじいさんの姿勢には、いくつになってもこうありたいと、見習うべきものがありますね。そして、全ての夢を叶えたときにカールじいさんの元に届けられる、エリーからのメッセージにぜひ注目してみてください。真の冒険とは何か?生きる意味とは何か?そんなことを、しみじみと考えさてくれる作品でした。
風のまにまに号

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